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弁護士リレーブログ

美容医療サービスと医療事故

2018.05.11

1 近年,美容整形(美容医療サービス)にまつわる相談が増えてきました。

相談内容は,大きく

  1. 契約に関するトラブル(例:強引な勧誘を受けた。手術代のために高額なクレジット契約を結んだ。)と
  2. 施術内容に関するトラブル(例:美容手術を受けたところ健康被害を蒙った。仕上がりが悪く,術前より却って外見が悪くなった。)

に分けられます。このうち,主として後者を医療事故相談として扱うことになりますが,美容医療分野の事件は,他の診療科と比べても難しいと感じています。

 

2 美容医療分野の事件はなぜ難しいのか,筆者なりに考えてみました。

(1)第1に,相談者が受けた施術(医療サービス)の内容を把握するのが大変です。

医療事件においては,相談者がどのような施術を受けたかを把握することが第一歩ですが,美容外科ではカルテに詳細な記録が残っていないことがほとんどです。このため,施術の内容を確認するのに苦労します。

(2)第2に,相談者が受けた施術にミス(過失)があるか否か,検討するのが大変です。

美容外科にて提供される施術は様々であり(最近では身体にメスを入れない「プチ整形」も増えてきました。),内容も,美容外科ごとに異なります。例えば「脂肪吸引」一つをとっても,各美容外科で独自の手術がなされており,医療水準(要求される医療行為のレベル)が確立しているわけではありません。

こうなると,施術を受けた相談者に健康被害が発生したとしても,それが,医療水準を逸脱した過失によるものなのか,避けられない合併症(過失ではない)なのか,判断に苦労することになります。

(3)第3に,相談者の被害(損害)をどう考えるか,検討するのが大変です。

相談者は,美しくなるために施術を受ける以上,その仕上がりに期待するのは当然です。そして「術前より外見が悪くなった」場合,目的が達成できず被害(損害)を蒙ったと感じることも,また当然のことです。

しかし,被害が,第三者から見て一目瞭然(例:健康被害の発生,大きな傷が残るなど)とまでいえない場合,外見が「悪くなった」かどうか=相談者が被害(損害)を蒙ったかどうかは,見る人によって意見が分かれてしまいます(裁判官が「悪くなったとはいえない」と判断してしまえば,裁判に負けることになります。)。相談を受ける筆者も,いつも悩んでいます。

 

3 思いつくまま3つ並べてみました。特に(1)と(3)については,他の診療科ではあまり問題にならない事情であり,美容医療分野はやはり独特の難しさがあると再認識しました。

それでも,筆者は今後も美容医療分野に取り組みたいと考えています。

述べたとおり,美容外科では多くの施術(医療サービス)が提供されており,内容もどんどん多様化しています。これらは,いずれもれっきとした医療行為であり,身体に大きな影響を与えるものでありながら(一定の割合で,合併症が発生することも避けられません。),医療事件としての取り組みが大きく遅れ,相談者の救済が極めて不十分です。研鑽を重ね,少しでもこの状況を打破できればなあ,と思う次第です。

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