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弁護士リレーブログ

医療訴訟における鑑定の実情について

2022.05.30

  •  鑑定について

医療訴訟というと鑑定というイメージを抱く方も多いかもしれません。

しかし、実際の医療訴訟においては、鑑定が実施されるのはかなりレアケースです。こちらの統計資料[1]によると、令和2年度の全国の医療訴訟(医療行為による損害賠償事件)647件のうち鑑定が実施されたのは45件と、1割を下回っています。

鑑定が実施されるのは、原告・被告双方の主張・立証を尽くしても裁判所の心証が得られないケースです。その意味では、原告側(患者側)代理人としては、訴訟提起にあたって、最初から鑑定ありきの姿勢はNGであり、鑑定に頼らずに立証していくことを目指すことになります。

なお、誤解されがちなのですが、訴訟でいう「鑑定」は、裁判所が主体となって鑑定人を選任して行われる手続です(民事訴訟法212条以下)。

これに対して、原告又は被告が独自に依頼した医師による意見書は「私的意見書」と呼ばれるものであり、民事訴訟法上の鑑定とは異なります(私的意見書はどうしても党派性が強くなりがちで、裁判所は鑑定に比べると私的意見書の信用性を低く評価する傾向にあります)。

 

  •  鑑定の実際の流れ
    • ⑴ 時期

鑑定が実施される時期は、基本的に、争点整理を経て尋問が行われた後(つまり訴訟の最終段階)です。

この段階であれば、本来は裁判所として判決が書ける状態になるはずですが、なお裁判所として争点について十分な心証が得られないような場合、裁判所から鑑定の提案がされることになります。

  • ⑵ 費用

1件あたり50~60万円ほどの費用がかかるイメージです。

ただし、画像のみを鑑定する場合には、もう少し低廉になることもあるようです。

費用負担は、鑑定の申立人(多くの場合は原告)が負担することが多いですが、原告・被告で折半することもあります。

  • ⑶ 鑑定事項

原告側・被告側において、鑑定人に尋ねるべき質問事項を「鑑定事項」としてまとめ、最終的には裁判所の方でとりまとめをして確定することになります。

  • ⑷ 選任の流れ

鑑定人の選任過程は、大阪高裁管内に所在する大学病院の附属病院から構成されている「大阪高裁ネットワーク」を使うことが多いようです。

候補者が決まったら、裁判所から連絡があり、原告側・被告側それぞれにおいて、利害関係の問題を検討します。

  • ⑸ 鑑定方式

東京地裁では、複数の鑑定人が一堂に会して口頭で議論をするという「カンファレンス鑑定」が実施されると聞いていますが、少なくとも大阪地方裁判所では私が知る限りカンファレンス鑑定の利用例は聞いたことはありません。

大阪地裁での鑑定方式は、書面の形で鑑定人の見解を記載する書面鑑定の方式が原則といえます。鑑定書の内容が十分でなかったり、鑑定事項に十分回答していないようなケースだと、補充鑑定として再度の質問を行うことがあります(ただし、この場合も、口頭で尋ねるのではなく、書面の形で回答してもらうことが殆どでしょう)。

 

  •  鑑定についての雑感

鑑定書も訴訟上は1つの証拠であり、裁判所は鑑定の見解や結論を採用する義務はありません(鑑定書とは異なる結論をとった判決も存在します)。しかし、実際上は鑑定が判決に及ぼす影響は非常に強く、裁判所が鑑定書と異なる見解を採用することは極めてレアです。

資料を読み込んで、丁寧に回答してくれる熱心な鑑定人がいる一方、鑑定事項に正面から答えない、結論ありきで根拠を十分示していない鑑定書も残念ながら見受けられるところです。

訴訟を提起する原告としては、ただ損害賠償を求めるというのではなく、なぜ患者が死亡あるいは後遺障害残存という重大な結果になったのか、どうすれば防ぐことができたのかという点について悩みに悩んで訴訟に至ったということが多いです。高額な鑑定費用を負担したにもかかわらず、そのような不誠実な鑑定書が出てしまうことによる失望はどれほどのものでしょうか。

鑑定人は中立公平な観点から見解を述べるという立場である以上、原告側に不利な結論となる場合があることはもちろんでしょう。ただ、鑑定人の皆様におかれては、なぜ訴訟にまで至ったのかという患者側の思いも理解していただき、いずれの結論であっても当事者が納得できるような丁寧な根拠とともに示していただきたいと切に思います。

 

(会員弁護士 Y.U)

[1] 令和2年度司法統計年報概要版(民事・行政編)第24表「第一審通常訴訟既済事件の証拠調べ―事件の種類別― 全地方裁判所」 https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/030/012030.pdf

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