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弁護士リレーブログ

オンライン診療について

2021.09.30

1.昨年以降,新型コロナウイルスの蔓延によって,社会の様相は大幅に変わりました。あらゆる分野でオンラインの利用が進みましたが,医療分野も例外ではありません。

皆さんも,「オンライン診療」という言葉を聞かれたことがあることでしょう。従来通り医院に足を運んで診察してもらう方法を「対面診療」と呼ぶのに対して,オンライン診療とは,パソコンやスマートフォンなどの機器を用いて,病院の予約から決済までをインターネット上で行う診察・治療方法のことを指しています。コロナの感染拡大によって,病院に行くことを躊躇われる方も多いと思われる昨今,利用しやすいオンライン診療制度の構築が,不可欠ではないでしょうか。

 

2.かつては,オンライン診療に対して,無診察治療等の禁止を定める医師法20条(「医師は,自ら診療しないで治療をし,若しくは診断書若しくは処方せんを交付…してはならない」)に抵触するのではないかという疑問が呈されていたことがありました。

しかし,時代の波には逆らえず,僻地の患者に限定的に実施されるものと解釈されていた遠隔診療(オンライン診療)について,一定の要件の下,都市部においても広く適用することが認められるようになり,平成30年3月,厚生労働省は,「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下,「オンライン診療指針」)を策定しました。

 

3.オンライン診療指針には,「最低限遵守すべき事項」として,数々の項目が掲げられていますが,それらを遵守する限り,医師法20条には抵触しないとされています。

「最低限遵守すべき事項」とされている代表的な項目について,以下,簡単に紹介します。

 

第1に,オンライン診療の提供に関する事項として挙げられている点としては,

①医師-患者合意:オンライン診療を実施する旨について,医師と患者との間に合意 があること

②適用対象:対面診療に代替し得る程度の患者の心身の状態に関する有用な情報をオンライン診療により得ること

③診療計画:オンライン診療を行う前に,患者の心身の状態について,直接の対面診療により十分な医学的評価を行い,それに基づいて診療計画を定めること

④本人確認:医師が医師免許を保有していることを患者が確認できる環境を整えておくこと

⑤薬剤処方・管理:必要な医薬品については,オンライン診療による処方を可能とするが,原則として新たな疾患に対して医薬品の処方を行う場合は,対面診療によってなされること

⑥診察方法:オンライン診療を行っている間,患者の状態について必要な情報が得られていると判断できない場合は,直接の対面診療を行うこと

などがあります。

 

第2に,オンライン診療の提供体制に関する事項として,

①医師は医療機関に所属し,その所在を明らかにしておくこと

②患者がオンライン診療を受ける場所は,清潔かつ安全でなければならないこと

などが求められています。

また,通信環境の整備が必要となりますが,診療という行為は,究極の個人情報を扱うものである以上,プライバシーの保護が徹底していなければ,安心して利用することができません。そのため,オンライン診療に用いられるシステムに伴うリスクを踏まえた対策を十分に講じた上で,診療を行うことが最重要課題の一つです。他方,患者側も,医師の了解なく録音・録画をしたり医師のアカウント情報等を診療にかかわりのない第三者に提供したりすることは許されません。

 

4.以上のとおり,オンライン診療を適切に進めるためには,医師側のみならず患者側にも遵守すべき事柄があることに加えて,システム導入のコストが診療報酬に転嫁され患者の負担が増えるといった問題も指摘されており,簡単にいつでもどこでも実施可能というものではありません。しかし,オンライン診療によって,診療を受けるまでの長い待ち時間,会計や処方の手続きの待ち時間の解消が図れ,自宅や外出先でも診療が受けられるので,しんどい思いをしてクリニックに足を運ぶ必要もなくなり,院内感染の防止にもつながります。

 

ますます進む高齢化や新たな感染症の発生の可能性を考えると,今後,オンライン診療が,対面診療と同等の役割を果たしていくことが期待されます。オンライン診療のメリットを認めた上で,現状の問題点をどう克服していくのか,早急な対策が求められる時期が到来しているようです。

 

会員弁護士 Y.U

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