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弁護士リレーブログ

がん見落とし事案の損害,特に逸失利益について(後編)

2021.05.31

2021年1月より,このブログでは,2020年12月に開催された「全国交流集会in愛知」において,大阪医療問題研究会の研究グループが発表した研究内容を紹介してまいりました。

今回は,その第5回(最終回)です。

前回(第4回)のブログでは,がんの見落とし事案では逸失利益(本来得られたはずの収入が得られなかったという損害)が低く計算されていることが多いことが問題であると考えていることをご紹介しました。

では,具体的に逸失利益を適正に評価するためにはどのように算定すべきかについて,もう一歩踏み込んで検討してみました。方法としては次の二つをご紹介します。

 

 

まず,一つ目は,以前のブログ「がん患者の生存率」でご紹介した5年相対生存率(実測生存率から対象疾患以外の死因の影響を除去・補正したもの)などの統計データを用いる方法です。例えば,胃がんの患者で,本来発見されるべき時期から2年後にがんの見落としがあったことがわかり,治療を開始しましたがその6か月後に亡くなった事案を想定してみます。この場合,当該患者は本来発見されるべき時期から見ると(治療を受けていなかった期間があるにもかかわらず)2年6ヶ月間生存していたことがわかります。そうであれば,見落としがなく適切に治療が開始されておれば,実際の2年6ヶ月間よりも長く,(治癒の指標とされる)5年後も生存していた可能性があるのではないかと考えます。このことは,例えば胃がん患者の5年相対生存率のグラフによると,本来の治療開始時点から5年後に生存している人の割合は低いとしても,当該患者は2年6ヶ月間生存していたのですから,当該グラフのうち2年6ヶ月時点で生存しているグループに属していることは明らかです。そうであれば,2年6ヶ月間生存していた人の中でさらにもう2年6ヶ月後(計5年後)に生存していた人の割合を見ることで,先ほどの治療開始時点から5年後に生存している人の割合よりも高いことがわかります。そのため,5年相対生存率のグラフを用いるにあたり,見落とし期間と実際の治療開始から亡くなるまでの期間を踏まえて検討することで逸失利益を適正に評価できるのではないかと考えます。

 

 

次に,二つ目は,割合的算定の方法です。以前のブログ「がん見落とし事案の損害,特に逸失利益について(前編)」でご紹介したとおり,現在の裁判例によるとがんの見落とし事案では見落とし当時50歳の方でも2~3年しか働けないとして逸失利益が低く計算されていることが多いです。これは,5年生存率が70~80%以上認められる場合であれば67歳まで働くことができたと認められやすいのですが,がんの見落とし事案においては5年生存率が70~80%以上認められることは多くはなく,5年生存率が70%を下回る(例えば65%)と途端に2~3年しか逸失利益が認められなくなるからです。このように,5年生存率がわずか数%違うだけで逸失利益に大きな差が出てしまうのは問題であると思います。そこで,このような大きな差が生じないよう,5年生存率の低下に伴い逸失利益が比例的に低下するよう計算するのが合理的だと考えました。この計算方法によれば,5年生存率が65%の場合は67歳までとはいかないにしても67歳に近い年齢まで働けることを前提に逸失利益が認められることになり,逸失利益が2~3年しか認められないとの結論は避けられるのではないかと考えました。

 

 

 

以上,ご紹介した上記の二つの計算方法は未だ確立した考え方ではなく試行錯誤している段階です。そのため,今後,裁判実務に携わる中でさらに突き詰めて検討を進めていく所存です。

 

全5回にわたって大阪医療問題研究会の研究グループが発表した研究内容を紹介してまいりました。当研究会としては今後も研鑽を積み,患者側の権利が適切に確保されるべく努力してまいります。

 

会員弁護士 M.M

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