第46回医療問題弁護団・研究会 全国交流集会について (患者側から見た医療事故調査制度について)
2024.11.30
2024年11月15日に、第46回医療問題弁護団・研究会 全国交流集会が富山で開かれました。この集まりは、1978年(昭和53年)を第1回として、患者側で医療過誤訴訟を担当する弁護団や医療問題を研究する全国の弁護士が毎年1回持ち回りで集まって、事例報告や研究報告、講演会などを行い、交流を重ねて来ました。
今年のテーマは、消化器事例の報告、「医療事故調査制度の経験と課題」、「消費者医療被害に関する近年の弁護団活動」、「医療機関の患者側に対する説明会に関するアンケート結果の報告と検討」でした。
説明会の報告は、大阪ではほとんど行われていませんが、その効用について、患者側の思い込みの解消や納得の契機になることや、早期解決につながったなどの分析は、今後、説明会の開催を相談者に提案するかどうかを判断する際の資料として有用でした。
特に、医療事故調査制度が来年10年を迎えることについてメディア報道が散見されますが、今回の報告は、日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)の事故調査に外部委員として関与している弁護士から丁寧な報告がありました。
事故調査の対象となる事例は、「予期せぬ死亡」(医療法6条の10・1項)であるとされていますが、今回の報告では、死亡する可能性があるという説明や記録があっても、一般的な死亡の可能性の説明や記録は該当せず、個人の臨床経過を踏まえた当該患者について説明や記録であるとされている(厚生労働省のHPから 医療事故調査制度に関するにQ&A・Q4)ことが指摘されました。
さらに、事故調査相当事例や実施例について紹介されました。
これらの報告を聞く中で、本来、医療事故調査制度の目的は再発防止であり、責任の所在を明らかにするものではないとされていますが、実際の裁判で、医療事故調査の結果が出たことにより裁判上の和解が最近成立した経験を持つ患者側弁護士としては、今回の交流集会での報告と討議を元に、今後もこの制度を注目していきたいと思います。
会員弁護士 T.S