協力医面談における準備や留意事項
2024.02.29
- 1 協力医面談について
医療過誤か否かの検討を行う調査手続において協力医の存在は不可欠です。
そのため、協力医からその専門的な知見や意見を聞くことができる協力医面談は非常に重要です。
ただ、協力医も臨床をしながら対応いただいている方が多く大変多忙です(より良い医療のためという目的で、善意で協力いただいている方が多い印象です)。そのため、大量のカルテを送って「何か問題点はありますか」といった雑な依頼の仕方では、事案に即した適切なアドバイスを受けられないことになりかねません。
そのため、患者側弁護士として入念な準備や対応が必要となります。
以下、私の方で実践している協力医面談に際しての準備や留意事項について説明します。
- 2 送付する資料について
- ⑴ カルテ
いきなり面談に入るわけではなく、カルテ類を送付して、協力医に確認・検討してもらった後に面談日程を決めることが通常です。
近年は電子カルテの普及の影響もあり、開示されたカルテは1000頁を超えることも珍しくありません。そのような膨大な資料を整理もされないまま送っても、余計な時間と手間をかけさせてしまうことになります。
そこで、死亡や重大な後遺症との関係が深いと思われる時期のものを中心として、ある程度取捨選択をすることが必要です。また、カルテを紙媒体で送るか、あるいはPDFのデータにした形で送るかについても協力医に確認します。
- ⑵ 診療経過一覧
そして、弁護士の方でカルテの診療経過をまとめた診療経過一覧表も作成して、送付資料に加えます。入院患者であれば定期的に血液検査等が実施されており、特に重要と思われる数値の推移も表でまとめることもあります(例えば術後感染が問題となるケースでは、白血球数やCRP等)。
- ⑶ 質問事項
弁護士の方でカルテや基本的な文献を検討した上で、問題と思われる点をまとめたものを質問事項として協力医に送ります。
もちろん弁護士は医学の素人なので、質問事項の前提となる医学的知見が誤っていたり的外れな質問となっている場合もあります(私も何度も経験しています)。
ただ、「何か問題はありますか」といった抽象的で曖昧な聞き方だと、焦点が定まらず協力医としてもどこに意識を向ければいいか分からず、協力医面談で十分な情報が得られない可能性が高くなります。
的外れである可能性を踏まえつつ、「ガイドラインには〇〇せよと書いていますが、本件ではそれが実施されていません。この点は問題ではないでしょうか」といった形で、なるべく具体的な根拠を示して質問事項を構成するようにしています。
- 3 面談の際
従前は協力医が所属している医療機関まで赴いて面談することが通常でしたが、コロナ禍を契機としてzoomでの面談がスタンダードになりました(交通費がかからない分、依頼者の負担も軽くなるメリットがあります)。
ただ、リアルで会うことができない分、資料を互いに見ながら確認するという作業がリアルに比べるとしづらくなります。弁護士としては、カルテは入念に読み込んでおき、協力医から指摘された箇所はすぐに開くことができるよう準備しておくことが必要となります。
- 4 まとめ
調査において協力医面談で得られる意見や情報は極めて重要で、その内容如何で医療過誤という立証が可能かどうかの結果も変わってきます。そのため、患者側弁護士としては協力医から事案に即した具体的なアドバイスを受けられるよう適切な準備や対応が求められるところです(自戒を込めて)。
(会員弁護士 Y.U)