学習会「がん医療におけるエビデンス不明の医療の実態について」に参加して
2023.09.30
2023年9月6日、東京の医療問題弁護団が開いた「がん医療におけるエビデンス不明の医療の実態について」という学習会に参加する機会に恵まれましたので、そのことについて書きたいと思います。
この学習会では、大学病院に勤務している現役の医師の先生から、現在の日本においてエビデンス不明の医療が実施されてしまっている現状のお話を聞くことができました。
普段、当職は、がん患者さんやそのご家族さんから相談を受ける機会がありますが、今回ご紹介いただいたようなエビデンス不明の医療を受けた、とか、受けたいと思っているがどうか、といった相談を聞く機会がほとんどなかったため、今回のお話は非常に勉強になるものでした。
たとえば、ビタミンC療法や免疫細胞療法、あるいはがんワクチンといった治療法については、エビデンスが乏しく治療効果が証明されていないにもかかわらず、それなりの数の医療機関(主にクリニック)で、自由診療で実施されているとのことでした。
このような場面で重要な判断基準になるのが、エビデンスレベルです。エビデンスに乏しい医療は、個人の体験談をホームページに載せていたり、「2万件の実績」といった件数を誇るような文言があったりしますが、いずれもEBMの観点からすれば、最低のエビデンスレベルしかありません。
インターネットにはさまざまな情報はあふれていて、がん患者さんは、その玉石混交の大量の情報の中から適切な情報を自分の判断で取捨選択することが求められます。筆者(40代)より上の世代では、学生時代にインターネット自体がまだ未発達で、ネットに情報が溢れかえったり、そこから適切な情報をどのように収集するかといった点については教育を受ける機会自体がなかった人も多いものと思います。特に、エビデンスレベルを考えるというような観点は、普通に社会生活をしていても知識として得られるものではなく、自分で考えつくことも極めて困難です。そのため、ガン患者さんの一部に、エビデンス不明の医療に大金を払ってしまう方が生じてしまうものと思います。
その意味では、当研究会のような患者さんに近い団体からも、エビデンス不明の医療の問題点を啓発するような内容を発信していくことも重要なのではないかと思いました。
会員弁護士 H.U