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弁護士リレーブログ

医療訴訟における和解について

2023.07.30

医療過誤事件において患者側が医師や医療機関に対して訴訟を提起した場合,必ずしも判決に至るわけではなく,訴訟の途中で和解が成立することもあります。訴訟における和解は,裁判所を介さない任意での和解と区別する意味で「訴訟上の和解」と言われています。訴訟上の和解ができることについては,医療訴訟でも医療訴訟以外の訴訟でも変わりがありません。

患者さんやそのご家族の中には,「和解」という言葉を聞いて,「医療ミスを起こした病院と仲直りするのか」「病院がやったことがおとがめなしになるのか」という疑問を持つ方もいらっしゃいます。しかし,実際はそうではなく,あくまでも一定の条件の下で,医療事故事件を解決するための方法の一つであり,「手打ち」のようなものととらえていただければと思います。

 

さて,医療訴訟における和解は,特に決まった時期や方法があるわけではなく,訴訟の早期において和解が試みられることもあります。しかし,私の経験では,医療訴訟の場合,訴訟の早期に和解が成立することはあまりありません。なぜなら,訴訟の早期に和解の話が出るような事案であれば,訴訟開始前の交渉や調停等において解決していることが多いからです。したがって,医療訴訟で和解の話が出るのは,争点や主張の整理が一通り終わった段階や証拠調べ(本人・証人尋問)が終了した段階であることが多いです。そして,訴訟の終盤において和解の話が出た場合,裁判所は判決になった場合の見通しをもっていることが多く,それを前提に和解の話が進んでいくことも多いです(もっとも様々な事情で,裁判所が提示する和解案と判決の内容が異なる事例もありますので十分な注意が必要です)。

 

では,医療訴訟における和解はどの程度行われているのでしょうか。最高裁判所が公表している医事関係訴訟事件統計によると,ここ10年間における既済件数における和解の割合は47%から55%の間で推移しています。ということは全体の事件のうち半数程度が判決に至らず和解で終了していることになります。

なお,訴訟事件全般で見ると,既済件数における和解の割合は35%程度となっています。医療訴訟における和解の割合が訴訟事件全般より多い理由ははっきりとはしませんが,個人的には専門訴訟であり裁判官の判断(判決)の予想がつきにくいことから和解へのインセンティブが働く点が一因の可能性があると考えています。

和解の話になった場合に,当事者双方がもっとも関心があるのは解決金(和解金)の具体的な金額であることが多いですが,それ以外にも検討すべき点(謝罪条項ないし「遺憾の意を示す」といった条項,事件や和解条項に関する口外禁止条項,再発防止を約束する条項などを入れるか否かなど)が多くあります。

また,医療機関側での和解への対応は,担当医や医療機関の意向だけでなく,実際に解決金(和解金)を支払う医療賠償責任保険の保険会社の意向が強く反映されることもあり,患者側も留意しておく必要があります。

したがって,和解の話になった場合の進め方や和解の諾否については慎重に考慮するべきであり。患者側が代理人弁護士を選任している場合には,その弁護士と十分に協議して和解への対応を検討する必要があります。

 

会員弁護士 T.H

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