医療過誤・医療ミスに巻き込まれたら一人で悩まずに専門の弁護士へ相談を【大阪医療問題研究会】

メール申込24時間受付

  • contact
弁護士リレーブログ

弁護士から見た医療過誤事件と一般事件の違い

2025.09.30

医療過誤事件を取扱う弁護士の中でも医療過誤事件のみを取り扱う弁護士は少なく,医療過誤事件以外の事件(以下,「一般事件」といいます)も取り扱っている弁護士が多いと思います。
今回は,医療過誤事件と一般事件の双方を取り扱う弁護士から見た医療過誤事件と一般事件の違いについてご説明します。
 
1 結果の予測可能性 
 一般事件の場合,弁護士は,当初ご相談をお受けした段階で,その法的知識と経験から,事案の内容や手元にある証拠などを見て,その事件の帰趨についてある程度       予測できることが多いといえます(もちろん,様々な事情により,予測どおりにならないこともあります)。
 しかし,医療過誤事件は,医師の過失の有無が中心的な争点となることが多いところ,弁護士には専門的な医療知識がないことや詳細な診療経過が明らかになっていないことなどの事情から,当初のご相談の段階では,医師の過失の有無を判断できないことほとんどです。
 
2 依頼者からの受任の方法
 一般事件の場合,弁護士が相談者の言い分が法的に成り立つと判断すれば,最初から相手方に対する請求(交渉や法的手続)を受任することもありえます。
 しかし,医療過誤事件の場合,上記のとおり当初のご相談の段階では,医師の過失の有無を判断できないことほとんどですので,その段階で医師や病院に対する損害 賠償請求を受任することはまれです。
 その場合,まずは医師や病院に対して法的責任を追及することができるか否かについての調査を受任することがあります。これを調査受任といいます。
 調査受任をした場合,弁護士はカルテを検討したり,医学文献を調べたり,協力医に意見を求めたりするなどして,医師や病院の法的責任の有無についての調査をします。
 調査の結果,弁護士が医師や病院に対して法的責任を追及することができると判断した場合には,次のステップとして一般事件と同様に医師や病院に対する請求(交渉や法的手続)の受任を検討することになります。
   
3 解決までにかかる時間
 医療過誤事件は,一般事件と異なる専門性があることから一般事件に比べて解決までに時間がかかると言われています。
 令和6年の医事関係訴訟事件の第一審の平均審理期間は,24.7ヶ月であるのに対し,通常訴訟事件の第一審の平均審理期間は9.2ヶ月となっています。
 私の経験でも,医療訴訟の第一審が2年以内に終結するケースは少ないといえます。
 
4 解決までにかかる費用
 一般事件では,弁護士費用のほか,事件遂行のための費用として,交通費・コピー代・郵便代・戸籍取得費用・裁判所に納める印紙代などの経費がかかることがありますが,事件遂行のための費用はそれほど高額にならないことが通常です。
 それに対して,医療過誤事件では,上記の費用のほか,協力医に意見を聞いた際の謝礼や協力医の意見書の作成費用がかかることがあり,またカルテが大部になるような事件では,カルテのコピー代(謄写費用)も高額になることがあります。
 また,弁護士費用についても,医療過誤事件の場合,専門性が高いことがあり,一般事件とは異なる報酬基準を採用している弁護士も中にはいるようです。
 
5 勝訴率
 令和6年の裁判所のデータでは,通常訴訟事件の第一審の原告請求の認容率は87.5%,人証調べを実施した事件でも59.8%であるのに対して,医事関係訴訟事件の原告請求の認容率は,17.5%にすぎません。
 この数字は,原告請求が認容されるべき事件のうち相当数は,訴訟上の和解で終了していると考えられ,額面通り受け取るべきかについては議論がありますが,いずれにせよ,医療過誤訴訟で原告側が勝訴するには高いハードルがあることは事実です。
 
6 まとめ
 このように弁護士から見た医療過誤事件は,一般事件よりも困難な面が多いことは事実です。
 しかし,医療過誤事件を取り扱う弁護士としては,医師や病院に対して法的責任を追及することができると判断した事件については,依頼者と二人三脚で粘り強く事件に向き合うことで,よりよい解決を目指していきたいと考えています。
 
会員弁護士 T.H

PAGE TOP