統計からみる医療訴訟の現状
2024.12.16
1 はじめに
裁判所のHPに、医療訴訟の統計資料が掲載されています。https://www.courts.go.jp/saikosai/iinkai/izikankei/index.html
現時点で令和5年までのデータが公開されていますので、これを踏まえて医療訴訟の状況についていくつかコメントいたします。
2 データの分析
(1)平均審理期間
平均審理期間は26.4か月となっています。つまり、審理に2年以上要していることになります。最も短かったのは平成26年(2014年)で22.6か月ですが、現在はそこから更に4か月ほど長くなっています。
(2)認容率(原告の勝訴率)
認容率(原告にとっての勝訴率)は、20%です。つまり、判決となった場合、認容となるのは2割程度で、残り8割は棄却(原告敗訴)ということになります。
なお、医療訴訟ではない通常訴訟の認容率は86.3%(人証調べ実施したケースでも58.9%)で、医療訴訟の場合の認容率の低さがこれで分かります。
(3)終局区分(判決で終わるか、和解で終わるか等)
事件全体のうち、判決となった割合は、36.1%です。他方、和解となった割合は54.5%です。
つまり、医療訴訟のうち半数以上は和解で終了していることになります。和解の場合、多くは金銭解決がされていると思われます。もちろん、患者側にとって勝訴的な内容の金額もあれば、見舞金程度の金額もあるでしょう。
3 雑感
令和5年11月30日付けのブログ記事(https://osakairyo-ken.net/blog/catgory01/310/)では、統計データを踏まえた医療訴訟の実情について以下のようにまとめました。
・医療訴訟は判決となった場合、認容率は20%以下であり低い
・ただし、実際の医療訴訟事件の半数以上は判決ではなく和解で解決しており、患者側に一定の支払いがされているケースが多いと考えられる
・訴訟に至る前の示談や調停、ADRで解決しているケースも相当ある
・判決となるのは、示談や調停等で解決できず、和解も成立しなかったということから、特に困難な案件が判決に至っていると思われる
この傾向は現在も特に変わっていないといえますし、今後も当面の間は変わらないものと思われます。
会員弁護士 Y.U