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弁護士リレーブログ

カルテ開示拒否に対する対応について

2024.07.30

医療過誤事件においてもっとも重要な証拠となる医療機関のカルテの入手方法については,大きく任意開示請求による方法と裁判所における証拠保全による方法があり,これらのメリット・デメリットについては2019年12月27日のブログで説明したとおりです。

今回は,医療機関に対してカルテの任意開示を求めたのにカルテの開示を拒否されたときの対応についてご説明します。

 

かつては患者やその遺族から医療機関にカルテの開示を求めても,開示を拒否される事例が多くありました。しかし,最近では,①平成14年11月15日に発行された日本医師会の「第2版 診療情報の提供に関する指針」において「医師及び医療施設の管理者は,患者が自己の診療録,その他の診療記録等の閲覧,謄写を求めた場合には,原則としてこれに応ずるものとする」とされたこと②平成15月9月12日の厚生労働省医政局長通知において「医療機関等は,患者等が患者の診療記録の開示を求めた場合には,原則としてこれに応じなければならない」とされたこと③個人情報保護法においても,個人情報において厳格な規制が設けられけ,その一つとして本人からの開示請求に対する開示義務が定められていること(個人情報保護法33条)④カルテ開示を拒否することは違法であるとの裁判例(東京地裁平成23年1月27日判決等)が出たことなどが浸透した結果,カルテの開示を拒否されることは以前よりは少なくなりました。

 

しかし,現在でも,カルテの開示を求めたにもかかわらず,医療機関が開示を拒否する例はあります。

カルテの開示を拒否する理由は大きく分けて二つあり,一つは,個人医院等の小規模な医療機関で,上記の局長通知,指針,個人情報保護法,裁判例の理解が不十分であり,「原則としてカルテは開示しなければならない」という認識自体がないもの,もう一つは「原告としてカルテは開示しなければならない」という認識はありつつ,カルテの開示を拒否できる例外的な事情があると主張するものです。

後者の例としては,本人又は第三者の利益を害するおそれがある場合や患者本人の心身の状況を著しく損なう恐れがあるときなどが挙げられます。具体的には,カルテ開示により患者と家族や関係者との間の人間関係が悪化する可能性がある場合などです。特に精神科のカルテなどにおいては,本人や家族に関する秘匿性の高い情報が記載されていることも多く,そのことを理由にカルテ開示が拒否されることもあります。また,未成年者が患者の場合に,法定代理人である親からの開示請求があったときに,患者が親に知られたくない事柄(例えば「親から虐待を受けている」など)が記載されているとの理由でカルテの開示を拒否されることもありえます。

 

いずれにせよ,カルテの開示を拒否された場合には,患者側としては,ます医療機関に対してカルテの開示を拒否する理由を確認する必要があります(上記厚生労働省医政局長通知においても「診療記録の開示の申立てを拒む場合には,原則として,申立人に対して文書によりその理由を示さなければならない」とされています)。

その上で不当なカルテ開示拒否に対して取るべき方法としては,①医療機関に上記上記の局長通知,指針,個人情報保護法,裁判例の内容を説明し理解を得る②医師会や自治体に設置されている苦情処理機関に申立を行う③裁判所に証拠保全申立てを行うなどの方法が考えられます。

 

具体的にどのような方法をとるべきかは事案によっても変わってきますので,カルテ開示を拒否された場合には,その後の対応について弁護士に相談することも検討いただければと思います。

 

会員弁護士 T.H

 

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