医療機関による再発防止
2023.03.30
医療過誤被害に遭われた方,そのご遺族の方が,医療過誤事件を弁護士に相談するにあたって,「真実が知りたい」あるいは「損害を適切に賠償してほしい」とのご要望をお持ちになる方は多いと思います。また,「医療機関に謝罪してほしい」や「同じような被害者を出さないために二度と同じことが繰り返されないようにしてほしい(=再発防止)」とのご要望をお聞きすることも比較的多くあります。
ただ,「謝罪」というご要望を実現することについて,法的には非常に困難であることについては以前ご紹介いたしました(2021年7月)。
そこで,今回は「再発防止」について概説いたします。
結論から申し上げますと,「再発防止」のご要望を実現することも(「謝罪」と同様)法的には非常に困難です。これは,医療過誤分野を規律する法律である民法には,損害を与える行為を行なった者(医療過誤分野では医療機関や医師等)に対して被害者(ないしご遺族)が請求できるのは原則として金銭賠償に限られるからです。
そのため,法的に相手方に対して「再発防止」を求めて裁判手続を行なうことができません。相手方である医療機関側としても当然に法的に「再発防止」を行なう義務を負うわけではないのです。そもそも「再発防止」の取り組みをするということは,「別の行動をとっておれば当該結果を回避できた(=過失がある)」ことを意味し,過失の有無を争う姿勢を医療機関側が見せている場合には,より一層「再発防止」の取り組みをしてもらうことは困難といえます。
もちろん医療過誤を疑う症例があれば,医療機関側の内部で事故調査などが行なわれ,医療過誤と認定された場合には再発防止のための取り組みがなされることはあると思います。しかし,これはあくまで医療機関側による任意の取り組みであって,被害者(ないしご遺族)が医療機関側に「再発防止」を請求できるわけではないことに注意が必要です。
ただ,医療機関側に損害賠償請求を求める中で,示談や調停,訴訟手続きを問わず,金銭賠償に関する解決を図るとともに,稀に医療機関側に「謝罪をさせること」や「再発防止の取り組みを約束させること」についても実現できる場合があります。当研究会に所属の会員からの報告の中にも複数あります。
ですので,「再発防止」を求めるべきか否かも含めてご不明な点がある場合には一度弁護士に相談されることをお勧め致します。
会員弁護士 M.M