薬の副作用被害についての救済制度
2019.10.31
医療事件の相談を受けていると、薬の副作用によって被害を受けたというケースにときどき出くわします。
禁忌であるのに投薬してしまった等、処方に過誤がある場合には処方した医師や医療機関に対して損害賠償を請求することが可能ですが、そのためには医学的な知見が必要となり立証のハードルは高いです。また、現代医学でも人体のメカニズムはまだ完全には解明されておらず、大多数の人には全く無害でも、特定の人にだけ重篤な副作用が発生することがありえます。
薬の副作用によって死亡や後遺症等の重篤な結果が生じた場合には「医薬品副作用被害救済制度」による救済を受けられる可能性があります。これは、医薬品を適正に使用したにもかかわらず発生した副作用により、入院治療が必要な程度の重篤な疾病や障害等の健康被害を受けた方に対して医療費、医療手当、障害年金等の救済給付を行う公的な制度です。医薬品医療機器総合機構という機関が運営しており、詳細は同機構のホームページに記載されています(http://www.pmda.go.jp/kenkouhigai_camp/)。
この制度の特徴的な点としては、医薬品を「適正に」使用したにもかかわらず副作用が生じた場合の救済制度ということです。すなわち、処方した医師等に過失がなく、誰に対しても法的責任を追及できないような場合に救済をするというものです。また、「適正に」という要件があることからして、処方した医師等に過失がある場合には同制度の対象外ということになりますが、実際には過失の有無の判断は非常に微妙ですので、明らかに過誤があるというケース以外であれば「適正に」の要件を満たすことが多いようです。
給付の種類としては、入院を要した場合の治療費、後遺障害が発生した場合の年金、死亡が発生した場合の遺族一時金等があります。ただし、例外規定があり、抗がん剤や、救命の場合に多量の薬を使用した場合等には救済の対象から除外されることにご注意ください。
薬の副作用で健康被害を受けた方は、ぜひ「医薬品副作用被害救済制度」のご利用を検討されることをお勧めします。
(会員弁護士 Y.U)